ダイヤモンド


 昨日の夜、表参道の裏道を歩いていると〈だい…〉とかと声を掛けられた。


 見ると自販機の隣に白黒髪が凝ってシュロのように膨らんだ骸骨面の男がいた。

 
「なんです?」
「ダイヤモンド売ってるとこはないかな?」
「ダイヤモンド…。心当たりはないですね」
「無理か。ダイヤじゃ…」


 六十は過ぎているのに、ひょうひょうともガツガツとも見える
 不思議な歩き方の男は着古したジーパンがやけに格好良かった。





















 小澤征爾だった。